AI採寸支援機能をはじめました

 お客様の自己採寸に対するハードルは、以前より課題として認識しており、昨年から新しい採寸方式(v2)の基盤作りに取り組んでまいりました。研究目的での採寸を進め、十分なデータが集まった段階で、今年の1月からv2方式に移行しました。

 v1方式と比べ、v2方式では採寸がよりラクになるよう工夫したのですが、依然として自己採寸の難しさを感じる方もいらっしゃいます。この課題を解決するため、近年急速に進化するAI技術の活用に至りました。

AI採寸支援機能について

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 自己採寸が難しい理由の一つは、採寸が正解かどうか未知数であることです。

 なるべくわかりやすく「このように採寸してください」という図解やビデオでの説明を提供してきましたが、それでも正解が見えないのは不安に感じられるお客様は少なくないと思います。

 AI採寸支援機能では、身長・体重・3サイズを入力することで、AIが推論を行い、すべての採寸データを自動で算出します。ガイドデータになる数値としてお客様はこの推論結果を参考にしながら、自己採寸を行うことができ、より安心して採寸に取り組んでいただけます。

 もちろん、AIが提供するのは参考値であり、お客様が実際に計測された数値とは異なる場合もございます。しかし、この予想値は、採寸時のガイドラインとなり「この測り方で間違っていないだろうか」という不安を軽減する助けになるでしょう。

AI機能実装までの道

 2022年の10月、AI画像生成の登場は非常に大きなインパクトを与えました。当初はAIに対して懐疑的な姿勢を取っていましたが、触れもせずに敬遠するのは偏った思考であると感じ、まずはNovelAIを試してみました。テキストから画像が生成されるという衝撃的な体験は、今でも鮮明に覚えています。

 その後、さらに調査を進めていく中で、ローカル環境で画像生成が可能な仕組み、Stable Diffusionに出会いました。AIの進化は驚くべきもので、オンライン上に豊富なドキュメントが存在し、少しずつインストールや設定を行い、自分のPCでも画像を生成できるようになりました。Xやブログなどでこれまで触れてきた内容から、当店がAIに取り組んでいることをご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、その後もさらにAI技術を深掘りしてきました。

 最終的にはPyTorchにたどり着いたわけで、当初はGPUドライバをどう動作させるかの中でいろいろ触れていたところですが、その後、PyTorchの使い方がだんだんとわかってきたため、このライブラリがあればある程度のAIの仕組みが自分で作れるのではないかと思い、少しずつ調べていくようになりました。

 PyTorchは、AI(人工知能)や機械学習のためのオープンソースのフレームワークです。特にディープラーニングと呼ばれる分野で広く使われています。簡単に言えば、コンピュータが自動的にパターンを学習し、画像認識や音声認識などを行うためのツールです。特にPyTorchが強みとするニューラルネットワークは、人間の脳の仕組みに非常に似た構造を持っており、情報を層ごとに処理してパターンを学習します。

 少し話が逸れますが、この仕事を長年続けていると、採寸情報の予測がある程度直感的にできるようになってきます。例えば、身長と体重がわかればおおよその寸法が予想でき、さらに3サイズの情報があれば、痩せ型、標準型、ふくよか型といった体型の傾向も予想しやすくなります。この経験を、何とかサーバ上でシステム化し、自動化したいという課題がありました。

 最初は、統計学や中央値の計算、スタッフの経験に基づく法則をソフトウェアに組み込み、サービスとして提供できないかと考えていました。しかし、実際にどうやって実現するのかと考え始めると、それ以上の進展がなく、悩み続けていました。そんな中、ディープラーニングの技術が、この課題を解決する手段になるのではないかと、ぼんやりと感じ始めたのです。

 当店では、10年以上にわたり蓄積された採寸データがあり、これらは非常に重要かつ機密性の高いデータです。そのため、いくら相手方が安全なクラウドサービスだからといって、データを社外へ委託することもできません。そのため、AIの学習においても外部サービスは利用できず、オンプレミス環境での運用が必須となっていました。

 AIを活用したシステム開発にはまとまった時間が必要だと感じていましたが、なかなか時間を確保できずに進展がありませんでした。しかし、出張先の四国高松市で時間を確保できたことを契機に、一気に学習および推論コードを組み立てました。実際、コーディング自体は数十行程度のもので、利用するための仕組みを作るだけであれば、それほどハードルは高くありません。

 最終的に、学習モデリングファイルを作成し(右上のスクリーンショットが学習中のものです)、FastAPIを使用してAPIサーバを自作。これをウェブサイトに統合し、ようやく公開とたどり着きました。

今後のAIをつかったサービス展開

 当店にとって、AIによる採寸支援は大きな課題の一つでしたが、これをクリアしたことで、次に「あれもできるのではないか」「これも実現できるのではないか」と、さまざまな便利な仕組みが次々と思い浮かぶようになりました。現在、早速テストを進めている新たな仕組みも一つ完成しており、いずれこちらの機能も公開できればと考えています。