黒ズミ汚れが落とせる繊維、うらら生地。
ハダタイ.jpはあやめタイツ・たくみをリリースしてから、多くの生地を生み出してきました。
その一部として、
- あやめタイツ・たくみ … 今まで卸問屋から仕入れていた生地を、ここから初めて生地工場とダイレクトに契約したもの。大量生産のため資金的に社運を賭けた生地。現在受注受け付けています。
- みやび生地 … 生地メーカーが廃業してもその巻き添えにならないように複数のメーカーとの契約をしており、当時はメインでなかったメーカーとの共同企画。マジックテープを弾く、他の生地よりも特に洗濯しても色落ちがしにくいという点において、ハダタイにうってつけな生地として生産。以後メイン生地として70%出荷されている。
- どーる生地 … たくみよりも 2/3 くらいの厚みになっていたけどあまりもキモチがいい生地のため、リリースしないのは惜しいと思い生地を生産。その後外国タイツのフィット精度の話がでてくるときに、当店ではこちらの生地を進めている。フィット精度が抜群のわりには着用していも「キツさ」がないことで定評。
しかしながら、まだもう一つハダタイの問題点が残されていました。それは「黒ズミが落ちない」という問題。黒ズミのメカニズムは繊維がジャングルジム、黒ズミの粒子がバランスボールとすると、ジャングルジムの中にバランスボールが奥深く閉じ込められている状態です。また、72時間を超えるとバランスボールが溶け出し、ジャグルジムと一体化するケースもあります。いずれにしても、水や洗剤等で落とすことはできません。バランスボールを取り除くにはジャングルジムを一時的にフニャフニャに柔らかくするか、破壊するかのどちらかになるわけです。黒ズミを落とす手法はマニュアルにありますが、生地を傷めることは確かです。そのためここぞというときにだけ実施して下さいという旨も付記しています。
ただ、「タイツ」である限りはこの特性は当たり前の仕様でもあります。いわば、クルマはガソリンで動くものであり、牛乳で動くわけがありません。繊維業としてはこのくらいの通例です。牛乳でも動かせないかと当店では悩んだわけです。
閑話休題 (きぎょうひみちゅ)
結論からいうと生地工場の協力も得ながらも、試行錯誤の末に黒ズミを落とすことは成功しました。問題はその糸をタイツにできるかということ。レインコートや黒ジャンプ傘みたいな生地なら実現できやすいんですけど、女性が素肌に身に着けるストッキングやタイツのような柔らかい生地に落とし込めることができるかどうか、、最大の問題点というより不可能だろコレ、でした。(過去形)
過去形というのは成し遂げた会社とあったわけです。いわゆる一社一技術というものです。この「糸」を使い本格的に生地を生産することになりました。実用化のメドが立ってたけど、当店の問題とて予算不足。ハダタイというマイナー、かつ日本製という高コストをどう工面するかでした。
とにかくコストを削減するしかない。ステ振りでいえば、製品の品質だけを全部ぶち込むやり方です。お客さんへの影響としてはご来店のミーティングが一番わかりやすいかもです。他の会社や商社とくらべて、ご来店ミーティング時にはいつでもどうぞ、、営業が常駐しています、、、というわけでもなく、ミーティングに予約が必要だったり、ミーティング時のご案内が非常に細かかったりとお客様に負担がかかっています。このやりとりはコスプレスタジオも同じなので、経験ある人はそう気にならないかもしれませんが、いわゆる大手のショールームを期待していて、いたりつくせりが当たり前と想定している方には不便を感じるかもしれません。営業費、つまりミーティングにどれだけコストが削減できるかが生地がつくれるかどうかのキモでした。
で、ようやく生地の生産できる予算が確保できた、生産開始。となったわけです。
テスト生地を納品されたときに何人かの協力者に依頼をかけて、黒ズミが落とせるか実験してもらいました。結果から言えば、ほぼすべて洗濯で落ちる結果になりました。このほぼというのは、車のエンジンをいじるときに黒いオイルを浸した状態ですとさすがに落ちませんでした。
検証は済、生産メドも済、ここまでできたら後は受注、というところですが当店は極めて慎重でした。タイツという素材で黒ズミが落ちるなんて当店の認識では前代未聞。例えば長年使っていた場合どうだろうか? こちらで予想できない問題が発生するのではないかという懸念もずっとあったわけです。
そこでしばらくの間はβ版として位置づけいわゆるアーリーアダプター、イノベーターから試してもらう方針で受注を開始しました。
うらら生地の受注は受けても、しばらくなりを潜めていたのはこの理由です。そして、100着以上の出荷を経て、1年以上たちましたが問題点のフィードバックもなく、特に大きな対応依頼もでてきていないため、「そろそろ大丈夫かな?」という形で今月ようやく正式版に位置付けたわけです。
実際うらら生地はスペック上からいえば「みやび」の後継であり上位互換です。「みやび」特有の「マジックテープを弾く機能」も持っております。ただ、「みやび」よりも「うらら」が優れている、というのは早計です。着用感の好みもありますし、「うらら」には「うらら」の欠点も存在していますから、今後もお客様の声と需要を見極めつつ、配給のバランスも検討していくつもりです。